DC博士のワン・ポイント

認知症Q&A~ここが知りたい認知症~

第二話:介護スタッフからの質問「認知症の方の外出」

質問

 私は現在病院の介護スタッフをしています。
 数ヶ月前に当院を退院されたAさん(認知症 女性)は、場所の認識ができず、一人での外出は迷子になる可能性が高い方でした。退院後、Aさんが夫に車で送られ美容院に行った時の出来事です。
 介護者である夫は、妻の病状を理解していましたが、美容院には妻が認知症であるということを知られたくない思いがあり、「迎えに来るから終わったら必ず携帯に連絡してほしい」とだけ伝え自宅へ帰りました。
 その後、Aさんはそのまま一人で店を出てしまい、迷子になり警察に保護されるという事が起きました。美容院のスタッフは、夫への連絡を忘れていたようです。
 今後、在宅ケアが増えていけば地域との関わりも大事になっていくと思いますが、この現状を介護スタッフである私はどのように周囲の方に伝えていけば良いのでしょうか?

回答

 ご質問ありがとうございます。この事例では店側の認知症の理解が不足していることと、夫が妻の病気を知られたくないという気持ちに対してのアプローチが大切だと思われます。

●認知症の人を支える地域づくり
 質問者様のおっしゃるとおり今後認知症を抱える方々が今までどおり地域で過ごしていくための体制づくりが必要になっています。
 介護に携わる専門職として、地域の商店や住民の方々へ認知症の理解を深めていただけるよう働きかける役割があると思われます。
 Aさんをはじめ認知症の方が在宅生活を継続する為には、主介護者だけでなく家族や地域全体が認知症を理解していくことが必要です。そのためにも認知症サポーター養成講座の開催や受講をし、認知症の方やその家族の方を支え、誰もが暮らしやすい地域をつくっていくことが必要でしょう。(※認知症サポーター養成講座については、こちらをクリック。厚生労働省「認知症への取り組み」内、「認知症サポーターキャラバン」へ)

●男性介護者の問題
 認知症の方と24時間生活を共にしているご家族は、様々な悩みを抱えておられることがほとんどです。家族は、専門職ではないために介護に関わる全ての出来事が初めての体験です。ましてや男性介護者は、悩みやストレスを周りに伝えることが苦手な方が多い傾向があります。同じ介護をする仲間の経験や事例を聞き、自分の話をすることでずいぶん気持ちが楽になることがあります。そうした場に繋ぐことも専門職としての大切な役割です「認知症の人と家族の会」などをご紹介するのもよいかと思います。(※認知症の人と家族の会については、こちらをクリック)

認知症介護研究・研修仙台センター