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事例概要 事例68

タイトル:私の気持ちを知って欲しい

Ⅰ.<事例の状況>

普段は椅子に座り、穏やかな口調で歌を歌ったりしている。時々、独語を言うことがある。被害妄想から突然「警察を呼ぶぞ!」、幻覚に対し「お前が持っていったんだろう!」など話し、怒鳴りだすことがある。そのようなときは職員が声を掛けたり、1対1で対応したりすることで落ち着くこともある。職員がすぐに対応できないときには激しい興奮状態となり、職員の声掛けに対し耳を貸さなかったり、手を振り払ったりすることがある。また、幻覚から怒りの対象が他の入居者に向けられ、暴言を言ったり、本人の声が大きいことにより他の入居者とトラブルになったりしている。そのことで周りの入居者、本人がストレスを抱えている。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

穏やかに過ごしてもらいたいが、声掛けや、対応にあたるタイミングがつかめない。特に職員が1人しかいない場合に対応が遅れ、興奮状態に拍車がかかる。また、そのことにより他の入居者とのトラブルや、他の入居者・本人がストレスを抱えている。

Ⅲ.<キーワード>

他者とのトラブル。他の入居者が抱くストレス。本人のストレス。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 90歳代前半
性  別 女性
職  歴 70歳代まで小売店に勤務
家族構成 長男夫婦と同居
認知機能 HDS-R 0点
要介護状態区分 要介護3
認知症高齢者の日常生活自立度
既 往 歴 高血圧症・片耳は難聴
現   病 認知症
服 用 薬 レニベース錠・フロセミド錠・センノサイド
コミュニケーション能力 片方が難聴のため、もう片方で聞きながら話すことでほぼ全般のコミュニケーションは可能である。帰宅願望、被害妄想(物盗られ妄想)、幻覚といった症状が強く、本人が興奮状態にあるときは、こちらからの声掛けには耳を貸してもらえず、コミュニケーションを図ることが困難である。
性格・気質 マイペースで寂しがり屋。感情の起伏が激しい。
A D L 食事(自立)。排泄(自立)。入浴・着脱(1つずつの行為に声を掛ける必要はある)。移動(独歩)。
障害老人自立度 J2
生きがい・趣味 旅行、読書が好きであった。花や野菜などの植物の世話が好き。
生 活 歴 結婚後は夫の家族と同居し、一男一女をもうける。夫を戦争で亡くし、70歳代まで小売店に勤務しながら、女手一つで子供を育ててきた。その間、経済的にも苦しい時期があったとのこと。退職後は長男夫婦と同居していた。しかし、認知症の発症と進行によって自宅での生活が困難となり、4年程前に老人保健施設へ入居する。この頃より独語が見られるようになった。その後、特別養護老人ホームへ入居となる。入居当時は耳も現在よりは聞こえていた。1年程前に意識消失があり、脳外科及び神経内科を受診するが、特に異常は認められなかった。現在は片方の耳がほとんど聞こえないため声が大きく、特に帰宅願望や、被害妄想により不穏、興奮状態の強いときはより一層声が大きくなり、他の入居者とのトラブルになることがある。夜間は2~3時間程しか眠れず、自分のたんすを開けたり閉めたりすることを繰り返したり、独語を言いながら歩くことがある。
90歳代前半と高齢のため、内服薬による精神状態のコントロールはせず、現在に至る。
人間関係 長男夫婦の面会が1ヵ月に2度ある。(以前は週1回の面会であった)施設内において他の入居者との会話はほとんどない。
独語が激しく、難聴により話し声が大きいため、他の入居者とトラブルになることも多い。
本人の意向 穏やかに暮らしたい
事例の発生場所 特別養護老人ホーム
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