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事例概要 事例43

タイトル:トイレに行きたくない

Ⅰ.<事例の状況>

  Aさんは尿意がなく、自らトイレに行くことができない。そのため、トイレの声掛けをしているが拒否することが多い。「自分で行きますからいいです。」「やめてください。」「行きたい時に行きます。」と言う。しかし、常にパッドが濡れている状態で、パッド交換だけでもさせて欲しいことを伝えると、「濡れていません。」と言う。その後も誘い続けると無視をしたり、「もうやめて。」「放っておいて。」と職員を叩いたりする。時折、「そうですか、分かりました。」とトイレの声掛けに応え、トイレ前まで行ける時がある。しかし、便器の前に行くと表情が曇り、「行きません。」「立つのがつらいのでしません。」「今はしたくありません。」と言い拒否する。ごくまれに「そうですか。」と言い、表情は硬いがトイレに行くこともある。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

本人が納得できないままトイレに誘われることで、不安や怒りを感じている。
本人が何故、拒否しているのかはっきりせず、無理強いしてしまう。
本人が強い口調で怒ったり、叩いたりすることで職員はストレスを感じている。

Ⅲ.<キーワード>

 トイレが嫌。 嫌なことをさせられる。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代後半
性  別 女性
職  歴 自営業
家族構成 夫と二人暮らしだった。夫が亡くなり、しばらくは一人で暮らしていたが、その後、息子夫婦と同居する(子供は3人)。
認知機能 不明
要介護状態区分 要介護4
認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅲa
既 往 歴 脳梗塞 心房細動 深部静脈血栓症
現   病 糖尿病 高血圧症
服 用 薬 ハーフジゴキシン・ワーファリン・マグミット・ワソラン
コミュニケーション能力 自分から話すことは少ないが、家族、他利用者、施設職員が話し掛けると「分かりました。」「はい。」と返事し、職員に何かしてもらうと「ありがとう。」と感謝する。しかし、会話の内容は理解できておらず、職員が介助に入ろうとすると怒り出すこともある。また、家族と会話をしている時は、息子は夫になり、嫁は誰か分からない。
性格・気質 素直で優しいが、時に気の強い面もある。
A D L 車椅子での生活が主で移乗・移動には介助が必要。食事は自力摂取ができる。排泄は常にパッドに失禁状態なので、定期的にトイレ誘導を行っている。(夜間は定期的にパッドの交換をしている)
障害老人自立度 B2
生きがい・趣味 畑仕事。編物。
生 活 歴 末っ子として生まれ、幼少期からの友達が2~3人いたが今は他界。結婚後、夫の仕事(自営業)を手伝っていた。普段は墓参りにも行き、元気な時はよく旅行に行っていた。夫の死後一人で暮らしていたが、数年前より息子と同居。デイサービス・ショートステイを利用し在宅生活を続けていたが、脳梗塞を発症し、その後車椅子生活となる。主介護者の体調がすぐれず、介護ができないため当施設入居となる。
人間関係 普段は物静かで誰にでも好かれる性格。他人や家族にとても親切であった。家族の面会も定期的にあり大切に思われている。職員への挨拶やお礼はいつも自分からして、普段は穏やかに話している。人の噂話が嫌いで、賑やかな場所が苦手。他の利用者の声や訴えが大きいと、はっきりと注意する意思の強さも持っている。
本人の意向 「(トイレは)自分でします。放っておいてください。」
事例の発生場所 介護老人保健施設
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