【運営】:認知症介護研究・研修センター(東京、大府、仙台)
  我が国の認知症介護に関する研究・研修の中核的機関として
  平成12年度に厚生労働省により設置されました

研修情報

認知症ケアマッピング(DCM)法研修

1.業務中心でなく、"パーソン・センタード・ケア(その人を中心としたケア)"の考えに基づいています。

1980年代以前の英国では、認知症をもつ人たちのケアが、業務中心(流れ作業)となっていました。 そこで、今は亡きトム・キッドウッド博士は、スケジュール中心・業務中心のケアでなく、その人の個性や、どんな人生を歩んできたかに焦点をあてたケアをすべきだと主張しました。 そこで、その思想を実践するために、認知症ケアマッピング(DCM:Dementia Care Mapping)法を考案しました。

2.認知症とは、脳の変化だけでなく、いろいろな要素が絡み合っておきている状態である。

博士は以下の5つの要素が影響しあって、認知症という状態を呈していると考えました。

  • (1)脳の変化
  • (2)その人の性格傾向、行動パターンなど
  • (3)今までの生活史、最近の出釆事
  • (4)体の状態(視力低下、難聴など)
  • (5)周囲の人との関わり

"パーソン・センタード・ケア"とは、これらの要素をいかに考慮し、その人に応じたケアを提供するかだと考えたのです。そして、それが提供されているか否かは、認知症をもつ人たちを詳細に観察し、どのような状態にあるかを見ればわかるのではないかと考えました。

3.well-being(よい状態)とill-being(よくない状態)

認知症の状態とは、固定されたものではなく、先に述べた5要素の影響によって(ケアの質によって)、変わりうるものだと考えました。
そして、何千時間という詳細な観察から、認知症の行動と種類ごとに、「もっともよい状態」から、「もっともよくない状態」までの、3~6段階に区分しました。 もっともよい状態とは、”その人を中心としたケア”が実行され、認知症をもつ人の尊厳が保たれている状態であり、もっともよくない状態とは、逆に、その人の人格および尊厳が軽んじられている状態を示します。

4.認知症ケアの質の向上を目指して、開発されたツールです。

この方法は、単なるアセスメント(評価)法ではありません。 観察で得られた、情報(対象者がよい状態にあるか、よくない状態にあるか)をもとに、介護現場のスタッフと話し合い、認知症ケアの質の向上をめざす目的で開発されています。

5.認知症ケアのマップ(地図)とは?

認知症ケアマッピング(DCM)法では、通常、6時間以上連続して、認知症をもつ人を観察します。 そして、5分ごとにどの行動カテゴリーに分類されるか、よい状態(well-being)からよくない状態(ill-being)までのどの段階にあたるかをアセスメントします。
これを表にしたものを、マップ(地図)と呼びます。 ちょうど、訓練(研修)をうけた登山家であれば、山に登らなくても、詳細な地図を見ただけで、どのような地形の山かを想像することが可能であるのと同様に、このマップをみればその人がどのようなケアを受けていてどのような状態にあるか、の概観をつかむことができるのです。

6.認知症ケアマッピングは、徹底した現場主義によって生まれました。

DCM(認知症ケアマッピング)法は、研究者らが、研究室で作ったものではありません。 認知症ケアの現場で、何千時間という観察から生まれたものです。 従って、観察中もスタッフが多忙であれば、一時中断して手伝ったり、認知症をもつ人が危険な状況にあれば、積極的に介入したりすることが推奨されています。 このように、この方法は、研究至上主義の冷徹なアセスメントとはまったく異なり、”人間味あふれるアセスメント”といえるでしょう。

7.日本への導入事業が進められています。

平成14年度より、健康増進等事業の補助金により、認知症介護研究・研修大府センターが中心になり、日本への導入事業が進められてきました。
パーソン・センタード・ケア(その人を中心とした認知症ケア)やDCM法について勉強しようとした場合、今までは、英国などの海外の研修に参加するしか方法がありませんでしたが、現在では、日本で、日本語のテキストや資料を使って受講することが出来るようになりました。詳しくは、認知症介護研究・研修大府センターにお問い合わせ下さい。

8.DCM研修では以下のことを学びます。

【DCM基礎コース】
3日間の研修期間の内、およそ半日以上を費やして、DCM法(認知症ケアマッピング)の基盤となる"パーソン・センタード・ケア"の考え方を、講義と演習を通して学びます。認知症をもつ人を観察(マッピング)する際に、その人の立場に立った姿勢を持つことを、何よりも大切にしているからです。
・認知症をもつ人の行動や状態を表すコードの付け方を学びます。
・観察(マッピング)した結果の基礎的な分析方法やケア現場のスタッフへのフィードバックの仕方を学びます。
・最終日の試験に合格すると、DCM基礎ユーザーの資格が与えられ、自施設でのマッピングを行うことができるようになります。

【DCM上級コース】
既に基礎ユーザーの資格を持ち、一定程度のマッピングの実践経験を有する人を対象に行うのがDCM上級コースです。平成19年度から日本での受講が可能になりました。
このコースでは、パーソン・センタード・ケアに関する理解をよりいっそう深め、コード付けやルール等の知識をより強固なものとし、組織で、パーソン・センタード・ケアを実践していくための倫理、組織改革について、討議します。これらの演習や討議を通して、チームの一員として、組織の文化を変革するためのリーダーシップを学ぶことを目的とします。

このコースを修了すると、下記の知識や姿勢を身につけることができます。
・所属組織の中で、他の認定ユーザーと一緒にDCMに関する取り組みをする際の支援、実際の企画・立案や、各部署との調整などの役割を担うために必要な知識や姿勢
・ケア提供者や、その他の関心を持つ組織を対象にした、DCMに関する講演やプレゼンテーション(説明、報告、発表)を適切に行うための知識や姿勢
・より正確なコード付け、的確なケアサマリーの作成、日頃、直面する倫理的な課題への取り組むための知識や姿勢

DCM研修に関して、詳しくは認知症介護研究・研修大府センターにお問い合わせ下さい。

9.認定トレーナー

【認定トレーナー】
  水野 裕   ストラテジックリード・DCM認定上級トレーナー
  村田 康子  DCM認定上級トレーナー
  中村 裕子  DCM認定上級トレーナー
  住垣 千恵子 DCM認定基礎トレーナー
  桑野 康一  DCM認定基礎トレーナー
  鈴木 みずえ DCM認定基礎トレーナー
  阿部 邦彦  DCM認定基礎トレーナー

お問合せ先:
認知症介護研究・研修大府センター
愛知県大府市半月町3-294 TEL:0562-44-5551 FAX:0562-44-5831
mail:dcm-obu@dcnet.gr.jp 担当:事務部 花井

参考情報
コラム:「パーソンセンタードケア(その人を中心とした介護)について」はこちらをご覧ください。