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事例ワークシート 事例48

A 課題の整理Ⅰ 援助者が感じている課題

① 事例にあげた課題に対して、あなた自身が困っていること、負担に感じていること等を具体的にみていきましょう。

幻覚や妄想からくる精神不安で息もできないくらいになってしまう。ジェスチャーなどを行うことで表情も落ち着くことが多いものの、本当にそのケアがAさんにとって適切なものなのか判断が鈍ることがある。

B 課題の整理 Ⅱ 援助者が想定する対応・方針

② あなたは、この方に「どんな姿」や「状態」になって欲しいのですか。

・精神的にも穏やかに笑顔で生活して欲しい。
・家族と疎遠になっているが面会に来てもらい楽しい時間を過ごしてもらいたい。

ひもとき?
あなたは誰にどのようにアプローチすることで、家族に面会に来てもらえると考えていますか。また、アプローチする際に、起こるであろうと予測される困難はありますか?
援助者の視点

まずはAさんの娘からアプローチを再開してはと考えている。また、家族の心情として何らかの理由があるのか、しっかりと聞き取りを行っていく。

③ そのために、当面どんな取り組みをしたいと考えていますか(考えましたか)。

Aさんがどんなことがきっかけで落ち着きに欠ける状態に至るのかといった原因を再度、考察していく。

ひもとき?
「落ち着きに欠ける状態」を探っていこうと考えているようですが、その方法について考えていることがありましたら教えてください。
援助者の視点

日中の活動での精神状態や発言等での気づきや、また、家族のことを思わせる様子や行動や発言をしっかり記録として取っていく。

C 本人の状態や状況を事実に基づいて確認してみよう

④ 困っている場面で、本人が口にする言葉、表情やしぐさ等を含めた行動や様子等を事実に基づいてみていきましょう。

「もう死にたい。」「子供が背中に何人もいて重くて動けない。」「知らない人の子供がいるから迎えに来てもらって。」
⇒ジェスチャーにて子供を預かることで安心し、背中が軽くなり表情も穏やかになる。また、「今、迎えにその子の親が来ているからもう少し預かって。」と言っても安心する。

ひもとき?
どのような場面・状況で起こるのかを、もう少し詳しく教えてください。
援助者の視点

急に上記の発言が聞かれることがある。しかし比較的就寝前や夕方に多く聞かれることから時間で上記の発言が聞かれるよりも、暗くなってきたらなどといった状況がしっくりくる。
一人で居室にいてさまざまなことを考えていて、上記の精神状態に至るのかもしれない。

D 課題の背景や原因等の整理

⑤ 本人にとっての行動や言葉の意味を理解するために、思考展開シートを使って、課題の背景や原因を考えてみましょう。

思考展開シート

内縁関係の夫との離別が子供と疎遠になるきっかけとなっている。そのために「子供に対しての思い」や「会いたいという気持ち」を今まで我慢していたが、Aさんの許容範囲を超えてしまい、認知症によって妄想や幻覚となり苦しむ結果になっているのでは、と推測できる。

E 事例に書いた課題を本人の視点に置き換えて考えてみよう

ここで、この事例を本人の立場から、もう一度考えてみましょう。

⑥ 本人の言葉や様子から、本人が困って(悩んで)いること、求めていることは、どんなことだと思いますか?

・自分の子供ではないものの、スタッフにそっと寄り添って欲しい。
・できれば子供と会いたい。

F 課題解決に向けた 新たなアイディア

⑦ あなたが、このワークシートを通じて思いついたケアプランなど、新しいアイディアを考えてみましょう。

・できれば家族と電話連絡にて定期的に話をする。
・上記の状態に至った際には、スタッフがそっと寄り添い一緒になって過ごす。

ひもときアドバイス

 この事例は、自分の人生に未解決の課題を残しているように思います。
 子供を内縁の夫の元に残してきてしまい、自分の手で育てあげられなかったことに、とても悔いを残し、今でもそのことに苦しんでいるように思います。その心の痛みが子供を背負っている精神症状として現われ、また呼吸困難という身体症状を引き起こしているものと考えられます。
 ですから、Aさんが落ち着いた生活を取り戻していくためには、少しずつ、Aさんの心を軽くしていくための取り組みが必要かと思われます。

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