「ひもときシートを使ってみよう」
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ひもときシートとは

ひもときシートとアセスメントとの違い

ひもときシートは、アセスメントの視点と焦点を定めていくための「前段階の作業」と位置付けることができます。
事実情報の集積や分析をするアセスメントとは異なり、根拠のない対応をやみくもに繰り返す状況から、事実と根拠に基づいた適切ケアにつなげていくための「思考の整理」と考えてください。
認知症ケアの悩みや課題を抱える援助者は、その人の言葉や心を痛めている理由が分からず、認知症の人が表出している状態に振り回されていることがあります。
ひもときシートは、援助者の思いこみや試行錯誤で迷路に迷い込んでいる状況から脱するために、シートのそれぞれの段階で「評価的理解」「分析的理解」「共感的理解」の考え方を学び、援助者中心になりがちな思考を本人中心の思考(すなわち本人の気持ちにそった対応)に転換し、課題解決に導こうとするツールです。

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ひもときシートの構造

ひもときシートは、Step1からStep3までの3段階に分かれています。
 

Step1:評価的理解

評価的理解とは、援助者が認知症の人の行動や発言に惑わされてしまい、本人に対して「好き・嫌い・苦手・得意・いい人・悪い人」という感情的な理解をしてしまうことです。認知症ケアは「本人本位」が基本にありますが、まずは、援助者自身が自分の気持ちに向き合うところから始めます。
(ひもときシートA欄~B欄に該当)

Step2:分析的理解

分析的理解とは、課題と考えている事象の「言葉・行動」の意味を本人の立場に立って意味づけしていくことです。1つひとつの事実に対して、援助者が「なぜ?」「どうして?」と疑問を抱いていくことが大切です。Step2は、その理由を分析的に探りながら、援助者中心の思考を本人中心の思考へと転換していく準備段階です。
(ひもときシートC欄~D欄に該当)

Step3:共感的理解

共感的理解とは、Step2を通じて得られた理解をもとに、本人の言葉や行動の意味を理解し、本人の気持ちに対して「なるほど、そうだったのか」「もっともだな」と共感することです。Step3は、このような共感的理解のもとに本人の視点から課題への解決糸口をみつけ、アセスメントする際の焦点を定めていきます。
(ひもときシートE欄~F欄に該当)

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思考展開のための8つの要素

ひもときシートには、Step2のD欄「課題の背景や原因等の整理」をするために、事実を確認していく8つの視点が示されています。本人が発する言葉や行動を中心に置きながら、関連のありそうな情報を課題の背景にある事実や裏づけとして整理します。
あくまでも事実確認の整理をするシートであり、アセスメントのためのシートではありません。

(1)病気の影響や、飲んでいる薬の副作用ついて考えてみましょう。
この項目は、本人の病気(認知症および身体的な合併症など)や薬の副作用の影響について考えます。お年寄りは複数の薬を飲んでいることが多いですが、それが、思いもよらない副作用を引き起こしてしまう事もあります。飲んでいる薬と状態変化に関する最近の様子を振り返ったり、記録を確認したりすることはとても大切なことです。また、認知症の原因疾患によって中核症状は様々に異なります。本人の中核症状が、事例にあげられている困難に影響していないかについても考えてみる必要があります。
(2)身体的痛み、便秘・不眠・空腹などの不調による影響を考えてみましょう。
この項目では、痛み、便秘・不眠・空腹などの身体的な不調が、本人の心の状態に影響していないかについて考えます。認知症の人は、痛みや苦痛が生じていても、そのことを自覚したり、周囲の人に訴えることが出来ない場合があります。その状態を見過ごしているとそれが思わぬ行動・心理症状を引き起こしてしまうことがあります。食事や水分摂取量、睡眠時間、運動量の変化など、毎日の些細な変化であってもきちんと把握していることはとても大切なことです。
(3)悲しみ・怒り・寂しさなどの精神的苦痛や性格等の心理的背景による影響を考えてみましょう。
この項目は、本人の精神的な苦痛や性格等の影響について考えます。ここで重要なのは、本人が示す言葉以外のサイン、たとえば表情、しぐさ、雰囲気、眼の動きなどの非言語的な情報をくみとり、その背景について考えていくことです。課題解決に向けて、「不安」や「不快感」、「おぼつかなさ」といった心理的な苦痛をくみとったり、本人にとっての「快」が何かを考えたりすることも大切です。認知症になると、本来の性格や心情が変化することもあります。本人の性格等について、家族や親しい人からの情報を整理してみましょう。
(4)音・光・味・におい・寒暖等の五感への刺激や、苦痛を与えていそうな環境について、考えてみましょう。
この項目では、本人を取り巻く環境を見直しながら、課題への影響を考えます。 音・光・味・臭い・寒暖等感覚的な苦痛を与える刺激が、利用者を不快な気持ちにさせ、行動・心理症状を引き起こしていないか確認してみましょう。現在の環境が、利用者の落ち着ける居場所になっているかどうか、不快を招くような刺激がないかどうかについてももう一度見直してみましょう。
(5)家族や援助者など、周囲の人の関わり方や態度による影響を考えてみましょう。
この項目では、家族や援助者の関わり方に関する、本人への影響について考えます。本人と家族の関係は複雑になりやすく、家族も本人も自信や誇りを失っている場合があります。介護者による不適切なケア(本人の想いを無視したケアなど)が、場合によっては本人のストレスを引き起こす原因になっている場合もあります。
(6)家族や援助者など、周囲の人の関わり方や態度による影響を考えてみましょう。
この項目では、本来、本人が持っている能力を引き出すことや、意欲を刺激する環境整備(住まい・福祉機器・物品等)がなされているかを確認します。自分で出来ることが増えるほど、本人の意欲や自信につながるという事を意識しながら考えてみましょう。
(7)要望・障害程度・能力の発揮と、アクティビティ(活動)とのズレについて考えてみましょう。
この項目は、援助者が本人のためにと思って提供しているアクティビティー(活動)が、利用者の精神的な負担になっていたり、自尊心を傷つけたりしていないかを確認します。心身状態や、本人の要望を踏まえたアクティビティーが提供されているかどうかを振り返ってみましょう。本人は、自分自身の能力を適切に発揮できないと、精神的苦痛(ストレスや葛藤)を抱えてしまうことがあります。
(8) 生活歴・習慣・なじみのある暮らし方と、現状とのズレについて考えてみましょう。
この項目は、本人が大事にしていること、こだわり、家族や知人・友人・地域等との関係性等を継続するケアが行われているかを確認します。生活歴、暮らし方、本人の想い、人間関係、役割意識等の情報収集をしてみましょう。
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記入例

(注)「ひもときシート」の記入例につきまして一部訂正があります。平成23年2月21日以前にダウンロードされた方は、再度、ダウンロードして差し替えをお願いします。


ひもときシートの使い方