認知症介護指導者の紹介/仙台センター
林崎 光弘 (仙台センター第1期生)
地域の一員としての地域ケアへの取り組み
シルバービレッジ函館あいの里
地域の特徴
私達が生活する函館市は江戸末期に開港された歴史あふれる街です。歴史的価値も深い西洋建築があり異国情緒佇む事でご存知な方も多いことでしょう。北海道 の中では大規模な都市ではありますが他の地方都市同様高齢化が進み、65歳以上の方が人口の約21%を占めております。
私共の施設がある場所は市内の商業地から少し離れた住宅地にあり、自然も豊富にあります。周辺地域の方々は開設当初から私達に理解を示してくれ て、様々な協力をして下さっています。畑で採れた野菜だと言って持って来てくれたり、施設の車の調子が悪いと言えば修理してくれたり、回覧版が来たら職員
と老人が一緒に隣へ持っていったり、幼稚園バスが施設内を回って手を振って行ったりと様々な関わりを持って我々職員と老人達が暮らしていけるのです。地域 全体が認知症高齢者の生きる受け皿という土壌であるのだと信じて止みません。
施設が取り組んでいる地域ケアについて
私達の施設は、グループホーム2施設4ユニットと認知症専用型と一般型のデイサービスセンター2施設、そして居宅介護支援事業所を備えておりま す。また市社会福祉協議会の委託を受け、市民の方々に対しての相談機関として認知症老人の介護相談を行っています。これは認知症老人を抱える家族や施設の 相談員からの介護方法・福祉制度について相談を電話や来所にて受けているものです。グループホームやデイサービスセンターの利用者や家族だけでなく、一般 の市民が抱えている悩みを少しでも取り除けるよう他の機関とも連携して行っております。また指導者として在宅ケアを担うホームヘルパーの養成講習や看護師 の方々に対して認知症の理解を深く持って頂くための講義など、最終的に地域の方々へ還元されるような活動も行っております。
今後の課題と展望
諸外国、とりわけスウェーデンでは地域において家庭的なグループホームを受け入れる社会的土壌があります。いわゆる生活障害を持った人を社会で みるという考え方ができている国と云えます。しかし日本の生産能力主義のもとでは認知症の人を医療や集団でみる文化はあるが地域社会や個人としてみる 文化は無かったと思われます。だから大型施設や長期入院での集団処遇をしても何の罪悪感も無く当然のように進めてきたのです。大型施設を小さくしたから、 集団処遇から個別処遇にしたからといって全てが変わるわけではありません。しかし、第一に「人」が変わり(意識改革)、第二に「物」が変わり(ハード)、 そして 第三に「事」が変わる(ソフト)。このように変わりだしていくことが大事だと思うのです。そして最も大事なことは、認知症の人も一人の人間として幸せに生 き、価値ある人生を送る権利を有していることを決して忘れてはならないということです。地域社会の一員として「普通の生活」をスタートラインとして、その 人らしい生活を送る手助けをしなければならないのではないでしょうか。