認知症介護指導者の紹介/仙台センター
村上 勝彦 (仙台センター第3期生)
地域ケアの取り組み
総合老人福祉施設帯広けいせい荘
地域の特徴
私たちの施設のある帯広市は、北は大雪山系、西は日高山脈に囲まれた広大な十勝平野の中央部に位置する人口17万人の街。市の全面積の約4割を田畑が占め、平均耕地面積が24.6ha(全国平均1.6ha・北海道平均17.4ha)という農村型都市です。全国の例に漏れず高齢化の進展は著しく、人口自体に大きな変動はないものの、昭和55年に6.5%だった高齢化率は平成7年に9.5%、12年には15.3%となりました(国勢調査より)。その影響か、私どもの利用者の中には、高齢者世帯の増加が目につきます。
私どもの施設は、市の南部で純農村地帯である川西地区に、昭和62年に50床の特養として開設。以降高齢化の進展と歩調を合わせる形でサービス 内容を拡充してきました。介護保険以降はこの地域でも、社会福祉法人が中心だったサービス提供体制が一変、グル ープホームを筆頭にデイサービスや訪問介護分野で、民間企業の参入が相次ぎ、利用者のサービス選択の幅は拡大しています。
施設が取り組んでいる地域ケアについて
当苑が取り組む在宅サービスには、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所、デイサービス(2事業所・総定員45名)、ショートステイ(定員36名)、訪問介護、訪問入浴(1日5名)、認知症高齢者グループホーム(1ユニット・定員9名)があります。
平成14年4月に個室ユニット型特養を増設したことに伴い、ショートステイでは、利用者が従来の特養(2~4人部屋)と個室ユニット特養のどち らに泊まるか選択できる体制が整いました。またデイサービスでは、利用者のご家族を対象に毎月1回「家族交流会」を実施。 毎回4~5人程度の介護者と職員が施設の外で食事を囲み、介護の苦労を共感しあったり智恵を学びあいながら、家族同士が支えあうきっかけ作りを進めていま す。特に認知症のお年よりを介護するご家族は、日頃の苦労も大きいのでしょう、堰を切ったかのように日頃の大変さを語ってくれます。
在宅介護支援センターでは、折々に担当地域の老人会に出向いたり介護者教室を開催するなどして、介護保険制度の解説、在宅介護の智恵等をお話ししてきています。介護保険以降、住民の介護への関心は高く、参加者の熱心さが毎回伝わってきます。
今後の課題と展望
私どもの施設は市街地から離れた農村部にあり、利用者の立場で考えると利便性に欠けます。そこで今後は、市民の居住地に近い場所でいかにサービ スを展開するかが課題だと考えています。家族や馴染みの住民に近い場所で、しかも自宅に近い小規模な住環境の中で、 相談をすることができ、日帰りあるいは宿泊・生活できるサービスが多面的に用意されなければいけないと考えています。しかしそこで生活をすることが困難な 方は必ず存在します。行動性の高い重度の認知症の方やターミナルケアに代表されるような医療的ケアがかなり必要になる方はその 代表でしょう。そう考えた場合に、バックアップ施設としての特養の存在価値は一層増すと考えています。
家族の抱える問題は、介護だけではありません。子育ての問題や病気の問題などが重複する形で生活している家庭は少なくありません。現在帯広市で は、行政とその諮問機関で、年代や障害種別ごとにバラバラになっている相談窓口を統合する試みが検討されています。幸い私どもの 法人にも、保育・療育施設、精神障害者支援施設、高齢者ケア施設があります。その利点を生かしながらできる限り早く総合相談窓口を設置しようと準備を進め ているところです。
こうした動きが地域に根付くには、当然ながら、保健・医療・福祉・行政の連携が欠かせません。私ども施設の動きは動きで具体的に進めながら、上記の方々とのネットワークを広げ、多面的に展開できる地域作りを進めていきたいと思っています。