認知症介護指導者の紹介/東京センター
松浦 美知代 (東京センター第4期生)
地域ケアの確立を目指して
なのはな苑
地域の特徴
なのはな苑の環境
なのはな苑は、神奈川県の三浦半島の先端、三浦市の小高い丘の上に立地し、東に東京湾、西に相模湾とその背後に富士山を望む温暖な気候に恵まれ ています。横浜より、約45分のところにある三浦市は、マグロを中心とした漁業と、首都圏の近郊農業である野菜生産地として 知られています。農業、漁業に従事している古くからの住民と、首都圏への通勤者という新住民が混在し、人口52万人余り、高齢化率は20.1%です。隣接 する横須賀市は人口44万人人余り、高齢化率は18,8%。利用者の地域分布は、三浦市12~15%程度、横須賀市45%前後、横浜市南部25%前後、そ
の他、 逗子市、葉山町、川崎市と広範に及んでいます。
精神病院併設の100床の老人保健施設で平成7年6月開設しました。開設以来、認知症専用老健として運用し、認知症高齢者の抑制しない介護を展 開し、リスクマネジメントと、アセスメントの仕組みづくりに取り組んできました。その中で、既存の施設を改修し、ユニットケアを展開しています。
認知症高齢者への個別ケアと「在宅」の可能性
認知症高齢者のケアに取り組む私たちの課題は、一つは認知症高齢者に対する個別ケアの確立にあると考えました。在宅に出来るだけ近い環境で、し かしその環境だけでなく、ケアの面からも、認知症という障害によって隠されている残存能力を引き出し、在宅との連続性を持った 「普通の暮らし」の提供をユニットケアの目標にしております。
同時に、二つ目の課題として、その高齢者を地域で支える仕組みづくりにあることを強く感じました。ご家族と接して強く感じることは、認知症高齢者に対するケアの自信喪失、孤立感であり、また、施設間のたらいまわしに対する不安感、不信感です。
施設でのケア情報の提供とご家族の介護カの評価に取り組み、認知症高齢者における短期間であっても在宅の可能性を追求してきました。通所リハビ リ、短期入所の最大限の活用、病像に応じた他の社会資源との連携、これらの積み重ねによるご家族の介護カの実態に見合ったサービス提供による 在宅支援を目指しています。
文字通りの地域ケアを目指して
一人の入所者を中心に、ご家族・ケアスタッフ・相談員・施設と地域のケアマネージャー・かかりつけ医というチームケアが必要です。一人一人の高 齢者に対するケア情報の共有化こそ、地域に根ざした施設の役割と思います。ご家族からの生活歴・趣味・日常の生活という情報を頂き、 それをケアに反映させ、そして、施設でのケアの情報を提供していく仕組みが必要です。この「ケア情報の共有化」こそ、「地域ケアの内実」であろうと思いま す。ご家族・地域とのケア情報の共有化によって、在宅とのケアの連続性が保たれると思います。地域でのチームケアの確立が課題です。
基礎疾患・合併症を有した高齢者の増加により、地域における医療・介護のネットワーク作りが重要になっております。このチームケアの上に立って、十分なトリアージ能力(緊急時の医療必要度の判断能力)、マネジメント能力を磨くことも私たちの課題と考えています。
認知症介護のリハビリテーションという観点から、ユニットケアでの残存能力の発揮、在宅への試みを積み重ね、認知症高齢者の認知やADL・ IADLといった能力が、経年的にどの程度温存されていくのか、その効果について、データを積み重ねて検証することも課題と思います。