認知症介護指導者の紹介/東京センター
林田 貴久 (東京センター第5期生)
鹿児島県での認知症介護指導者としての役割
特別養護老人ホーム鹿屋長寿園
地域の特徴
私は鹿児島県鹿屋市にある、特別養護老人ホーム鹿屋長寿園で副施設長をしています。また、併設するグループホームふれあいで管理者を兼務しています。私 の住む鹿屋市は大隅半島にあり、人口約10万4千人規模の町です。その中で、高齢者施設、特にグループホームの設置は地域的にみても多いといえます。設置 主体も多彩で、民間事業者の参入も多いです。
そのような状況下で、鹿児島県における認知症介護実践者研修や、リーダー研修では企画・運営の段階から関わりを持たせていただいています。鹿児島県の実 践者研修では、1回約100名の受講生がおり、年間2回実施されています。100人という人数は、研修としては困難を感じる場面もありますが、様々な状況 から現状ではやむを得ないところもあり、指導者同士で最善の研修方法と効果を考えて研修内容を企画しています。 現在、鹿児島県には14名の指導者がおり、それぞれに協力しながら企画や運営を行っています。鹿児島県における研修の特徴としては、県の研修担当の方々 のみならず、介護保険課の幹部の方々まで認知症ケアの発展に熱心で、力を注いでいただいている点だと思います。打ち合わせはもとより、研修の打ち上げも含 め、現状と課題を本音で話す機会が定期的に持たれます。そこには、協働で認知症の人の生活がより豊かなものになるために、お互いの立場を理解しつつ良き パートナーとして取り組んでいくという気概のようなものを感じます。
認知症ケアにおいては、認知症高齢者の視点で現状を捉えて、それに合わせて環境を整えていくという考え方が浸透してきているように感じます。その環境の 中には当然、私たち介護者や専門職も含まれます。自らもその意識を持って関わりを持つ必要性があると思います。地域への啓発活動においても、福祉施設が地 域の拠点の役割を果たし、正しい理解の啓発に尽力しているところも増えてきているようです。認知症介護指導者の役割の一つとして、先に挙げた実践者研修や リーダー研修等のみでなく、地域における住民の方々への啓発にも積極的に参加しています。それはとりもなおさず、地域での生活が継続できるための基盤作り
ともいえます。
また、地域の小学校との交流も盛んで、小学生と高齢者が遊びや料理作り等を通して楽しみながら触れ合っています。ある小学校とは3年間の交流学 習を進めており、5年生を対象に年間24時間のカリキュラムの中で行っています。その学習の中に、認知症を正しく理解する時間を設けています。子供たちが グループに分かれ、グループワークで認知症の人の気持ちを考えてみる等、実践者研修で行っている内容と同様の取り組みも行います。子供たちのしなやかな視 点や感覚から、私たちが多くのことを学ぶこともしばしばです。
2020年には、日本で認知症の人が約300万人に達するといわれています。それは、誰も想像できない近未来です。しかし、身近で地道な活動を通して、 認知症の正しい理解と適切なケアのあり方を共に考え学んでいくことが大切な気がします。地域における認知症介護指導者の役割は、県や市町村と連携した現職 の方々への研修への参加も重要な位置づけですが、最も身近な地域資源として地域の啓発活動に積極的に関わりながら、分かりやすく伝えていくことも大切な役 割だと感じています。
そして、そこで生まれたネットワークがつながっていき、少しずつでも点が輪になっていくことが町作りの発想には必要だと思います。そういう意味
では、私たち認知症介護指導者には、人と人をつなぐという視点が求められており、自らもその役割を微力ながら果たしていきたいと思います。