豪雨災害を受けた人吉・球磨地方の認知症介護の現場から

 今月3日頃から熊本県南部でふり始めた雨は4日以降、人吉・球磨地方を中心に甚大な被害をもたらしました。その後、九州各地でも豪雨が続き、亡くなった方は2020年7/15現在で60名を超えています。現在も大変な状況が続いている、熊本県人吉・球磨地方の現在の介護現場の状況を、社会福祉法人共成舎代表で認知症介護指導者でもある、永田美樹さんのお話を通じてお伝えします。なお、このお話は、7/15夜に伺った内容です。永田さんと、永田さんが運営されている特別養護老人ホーム鐘ケ丘ホームは、今回幸い直接の豪雨被害をまぬがれました。現在永田さんは、ホーム運営の傍ら福祉避難所を開設したほか、様々な支援先と連絡調整しながら、被害を受けた施設・事業所を訪問し、情報を集めたり必要な物資を届けたりする等の活動をされています。以降永田さんのお話をまとめました。


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人吉・球磨地方の状況

 今日は人吉地方に行ってきました。やはり、この目で見て、耳で聴いて、肌で感じてみて分かることも多いです。人吉市も、中心部と端っこでは状況も生活も違っており、中心部には、民間でも物資の受け渡し所のような所が数ヶ所出来ていますが、端っこでは物資がいきわたらないところもあり、ママさん達のネットワークで物資を集めていらしたりしています。また、家のトイレが使えない為、外に設置された簡易公衆トイレを使っているのだけど、子供達が夜は外のトイレに行けずに、おねしょをする子が多数いるという話も聞きました。


認知症の人はどのような様子でしょうか?

 ホームの認知症の人は、これまでのコロナの影響で、家族に会えない時期が続いていたことに加えて、連日の大雨の報道もあり、故郷の悲惨な映像を見て不安になり、「お金を盗られた…。」などと不安になる人もいます。7月から条件付き、予約制で面会を始め、ようやく今週からちらほらご家族が来て下さるようになり、発災時点よりは幾分落ち着きが出てきたかな…、といった印象です。タブレットによる面会支援などは以前から行っていたのですが、マスクをしていてもやはり、リアルで会った方がいいのだろうな、と感じます。


スタッフも疲れがピークなのではないでしょうか?

 スタッフも疲弊していて、被災していないスタッフでさえ持病が悪化していたりします。また、新型コロナウイルス感染症に罹患した保健師さんと接触したかもしれない親戚に、物資を渡しに行った職員がいました。念のため今日は休ませていたのですが、親戚も本人も検査結果は陰性だったと聞いて、ホッと一安心しました。
 福祉避難所では、ヘリで助けられた高齢者を受けれたのですが、その方は奥さんが流されてしまったけれども気丈にふるまっておられて、その方の境遇を共有してスタッフを奮い立たせているという状況です。コロナが発生した避難所からの高齢者もPCR検査をしたうえで受け入れたりしていますが、スタッフに不安がよぎる様子も見られます。正しく防衛しなければなりませんが、なかなか難しいです。多くの被災者の声を聞いていると、誰か支援に来てくれないと地元だけではどうしようもないと言われています。かといって、やみくもに受け入れるのも危険。本当に難しいです。
 ただ、今日も連日来てくれる県内の仲間や、オンラインで様々な知恵やこれからの危機に備えるための方策を一緒に考えてくれる全国の仲間たちがいます。とてもありがたいです。


どんなサポートがありましたか?

 たまたま参加していた認知症介護指導者等の新型コロナウイルス感染症対策の情報交換をしているグループの、主催者である認知症介護指導者の井戸和宏さんが、グループで寄付や支援物資を募り、熊本県内の認知症介護指導者の皆さんと連携し、初動として「支援物資」を送ってくれました。
 また、大雨で高速道路が通行止めになりましたが、井戸さんを通じて、元日本代表のサッカー選手だった巻誠一郎さん自ら物資輸送を届けてくださいました。巻さんは、丁寧に確認しながら、施設で必要な物資をトラックから降ろしてくださいました。受け取る側のニーズをくみ取りお渡しいただいたのがとても嬉しくて印象的でしたし、被災施設などの状況を心配していただき、とても頼りになる繋がりになりました。 巻さんからは相手に対するリスペクトを感じました。サッカーファンの職員などは、巻さんを見ただけで元気に笑顔になった様子で、巻さんは人に元気を与える役割なんだと感じました。


鐘ケ丘ホームスタッフと巻さん


 今回の災害で、これまで取り組んできたことやネットワークづくりを行ってきたことは「やはり大切なことだったんだなぁ」と思いました。 避難所などに行っても、知った顔がいる、それだけで色々と繋がり、支援しやすい状況ができたりして、互いに安心することがありました。 私個人の身体を心配して指圧をしてくれたり、多くの方が心や体を支えて下さることに触れることができて、今回の災害を通じて、有難いなぁと認識することが出来ました。

今回インタビューをした認知症介護指導者の永田美樹さん


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 現地は、復興に向けた動きがこれから始まるというところです。それに加えて、新型コロナウイルス感染症対策にも待ったなしで直面しており、現地の負担は大きいと感じました。 現地の状況に興味・関心をもっていただき、可能な支援等があれば検討していただければと思います。(東京センター中村)


謝辞:ヒアリングに際し、認知症介護指導者の井戸和宏さんに仲介・サポートをいただきました。ありがとうございました。