認知症カフェを知ろう

1.認知症カフェをご存知ですか?

 認知症カフェは、2012年に認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)において初めて日本に紹介されてからわずかな期間で8000ヶ所近くまで増加しました。現在、認知症カフェは世界各国にありますが、他国と比較してもここまで急速に増加した例はありません(図1)

 こうした急増の背景には制度的な位置づけがなされたことは大きな後押しとなっています。認知症施策推進大綱では、認知症カフェについて次のように説明し、2020年までに全市町村設置を数値目標としています(表1)。


表1 認知症施策推進大綱における認知症カフェの説明

認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場。地域の実情に応じて認知症地域支援推進員が企画する等様々な実施主体・方法で開催される。
(認知症施策推進大綱より抜粋)

 認知症カフェは、これまでにない新たなコンセプトで始まったものです。そのため、まだまだ周囲の理解が十分得られているとは言い難い状況です。地域の方は、これまでの地域のサロン活動のような集まりとの違いが分かりにくいという声もよく聞きます。認知症カフェは、認知症の人とその家族の支援にとどまらず、それを支える地域を変えていくための新たな社会資源です。今回は、認知症カフェを理解し、そして実践できることを目指し、その本質と意味を探りながら解説したいと思います。


●カフェという言葉が持つ魅力と哲学
 認知症カフェは、始めるにあたり特に制約も基準もなく、場所さえ確保できれば誰でも始めることができる気軽さと、何よりも「カフェ」というネーミングのもつ魅力と目新しさがあったのではないでしょうか。「認知症」+「カフェ」と掛け合わせた「認知症カフェ」はいったいどこからきた言葉なのでしょうか。その起源はオランダにあります。今から20数年前1997年にライデン大学の一角で始まったアルツハイマーカフェがその始まりです。発案者は、老年臨床心理士であったベレ・ミーセン氏であり、老人ホームで心理職として働いていました。その仕事は認知症の程度を測る心理検査をすることでした。心理検査は必要なことですがその過程の中で本人にできないことを自覚させてしまい、混乱しストレスを負わせることにもつながることに気が付きます。そして、この苦しみにより家族と本人の軋轢をもたらしてしていることにも気が付きました。ミーセンは、家族と本人は自らの苦しみを語り、そして対処方法を知り学ぶ場が必要であり、そして取り巻く周囲の人間も理解を示すための場所が必要であると強く感じます。そこで、できるだけリラックスし、敷居が低く、語れる場を表す言葉は「カフェ」が最適だと考えました。そこからこうした診断直後からの支援の場「アルツハイマーカフェ」が始まるのです。
 認知症カフェは、このアルツハイマーカフェを源流として新たな社会資源としてヨーロッパを中心に支持され、その後日本に伝わります。

次回は「2.なぜ認知症カフェは必要なのか?」です。