認知症のスクリーニング
第三話:行政やかかりつけ医によるスクリーニング
一部の行政においては保健師等によりタッチパネルによる簡易認知テストが行われています。ゲーム感覚でできるものもありますが、認知テストそのものもあります。これらは認知機能を直接測定して認知症をみつけようとするものです。
市町村事業の認知症初期集中支援チームでは、一定の研修を受けた専門職によりDASC-21という生活状況の評価から、認知症かどうかや、重症度を判定します。
また、かかりつけ医においては、生活状況から認知症を疑ったり、簡易認知テストのMMSEや改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を実施して、点数が低いと専門医に紹介するというスクリーニングが行われます。MMSEやHDS-Rよりも検査を受ける側の負担を減らそうと、東京都大森医師会のようにTOP-Qを用いて認知症のスクリーニングを行っているところもあります。
HDS-Rは、10分程度で実施できる簡便な認知テストで、本来は認知症のスクリーニングテストとして本邦で1974年に開発されました。認知機能低下を正確に評価するには、より精密な認知テストが必要というのが、当時の考え方でした。しかし、認知症の人に精密な認知テストを実施することは、する方もされる方も共に苦痛となるので、40年以上経過した現在では、HDS-Rは認知症のスクリーニングとしてではなく、認知症の確定診断のためのテストとして使われています。30点満点で、健常高齢者では満点近い点数が保たれ、認知機能が低下してくると得点が低下する優れたテストで、認知症診断にも、また経過観察にも使われています。
社会福祉法人浴風会 浴風会病院
医師 内藤 典子