認知症介護指導者の紹介/大府センター
山田 典孝 (大府センター第4期生)
行政とともに取り組んだ地域における認知症高齢者ケアの推進
さわやかナーシング可児
地域の特徴
私が、指導者として認知症高齢者ケアの取り組みを行った美濃加茂市は、旧中仙道沿いの商業地を中心とした山間部に位置しています。美濃加茂市の高齢者福 祉は、私の所属する「社会福祉法人 慈恵会」と市および市社会福祉協議会が連携することにより、今日までの高齢者福祉を推進してきた歴史があります。その 中でも、5年前より市民啓発事業として認知症に関する講演会やシンポジウムに加え、毎年認知症を題材とした映画会を三者共催で行い、 今年度は1,600名余りの入場者を記録するなど、一般市民の認知症に対する関心は高いといえます。また、保健センターでは認知症予防事業として、高齢者 を対象とした認知症予防講演会や参加者に対しての「かなひろいテスト」を実施することにより、ごく軽度の認知症高齢者や認知症予備軍の高齢者をリストアッ プし、20回にわたり脳を活性化させるためのレクリエーション・指体操・合奏等を行う認知症予防教室を行うなど、行政も積極的に認知症の啓発および予防を 行っている地域です。
認知症高齢者ケアの取り組み
先述のとおり、もともと行政が認知症高齢者ケアに対しての積極的な取り組みと理解が土壌としてあったため、私が「認知症介護研究・研修大府セン ター」で研修を受けたことに対して期待を寄せていました。指導者研修は平成14年7月に終了しましたが、その月に市内の介護事業所に所属する介護・看護職 員・一般市民代表として家族介護経験者などを委員とする「美濃加茂市認知症高齢者ケア推進協議会」を設置し、会長職を拝命することとなりました。
協議会としてまず取り組んだことは、今まで行ってきた市民啓発事業や認知症予防事業に加え、認知症高齢者を抱える家族に対して継続的な研修会および交流会 を行うことでした。もうひとつは、市独自の認知症高齢者ケア専門職員研修初級者・中級者研修の立ち上げを行いました。これらの活動により、一般市民・高齢 者・家族介護者・専門職員を包括的に啓発・支援・養成していく体制の礎が構築できたのではないかと感じています。
今後の課題と展望
私の場合は、行政が積極的に関わることで様々な取り組みができたと思います。やはり、指導者研修を受けた指導者のみの活動では限界があります。 認知症高齢者ケアを地域で推進するためには、行政の理解と積極的な関わりは不可欠です。また、県内の指導者をみても、その後の人事異動でその役割が果たせ なくなってしまった者もいるため、指導者研修を受けた者が人事異動後も指導者としての役割が果たせるような配慮も必要でしょう。 私自身も、今年の4月に隣市の可児市へ人事異動となりましたが、法人の理解を得ることにより、現在も先述の「美濃加茂市認知症高齢者ケア推進協議会」の会 長職として美濃加茂市の認知症高齢者ケアの推進に携わらせていただくとともに、新たに可児市においても指導者としての役割を果たしていきたいと思っていま す。長期にわたる研修を受けた指導者を行政の姿勢や所属法人の都合で左右されないような環境作りが求められると切に願っています。