認知症介護指導者の紹介/大府センター
竹内 潔子 (大府センター第6期生)
施設の機能分散を進める地域ケアを目指して
岐阜県立寿楽苑
地域の特徴
私たちの施設は、岐阜市西郷(さいごう)にあります。地名のごとく、岐阜市の最西部にあたり、もともとは農村部として、田畑に囲まれた静かな地域でし た。10年ほど前から、大学や大型スーパーの移転、主要道路の整備に伴い、新興住宅地として、また教育、文化圏として発展しつつあります。 西郷地区は、総人口8200人に対して、昔からの住民の方々の高齢化が進んでいるとはいえ、老齢人口1100人、高齢化率は、13.4%で、岐阜市では最 も低い値です。隣接地区と共に、高齢者世帯や、独居の方々は、10%前後ですが、自治会活動や、民生委員を中心に支え合う地域性を持ち、高齢者の方々は、 農耕で鍛えた 丈夫な方が多く、老人会や生き生きサロンなどの取り組みも盛んで、社会参加が活発な比較的元気な地域と言えます。しかし、着実に高齢化は進んでおり、認知 症になっても住み続けられるための地域ケアの充実は、必至だと考えます。
施設が取り組んでいる地域ケアについて
平成6年に当地域に移転、開設して以来、「地域に開かれた施設」を目指して、苑内の児童公園の開放、夏祭り、映画会の開催、自治会参加の総合防災訓練、老 人クラブ、子供会、保育所の子供達との交流は、すっかり定着し、年間1300人余りのボランティアの方々が来苑しています。苑内の喫茶コーナーは、週5日 間営業して好評ですが、これも地域のボランティアによるものです。施設サービスとしては、30名のデイサービス、20名のショートスティの他、平成15年 9月より10名の認知症デイを開所しています。 和風民家を活用した地域密着型のサービスです。 これらのサービス以外に、年3回の地域公開講座、12月からは、月1回(認知のための)介護教室を開催しています。自然に、施設を理解をしてもらいながら、何かあった時には、交流の場で気軽に相談できる体制を作っています。
今後の課題と展望
自施設では、入所利用の8割の方に、認知症あるいは認知症の様な症状があります。これは、「個別ケア」を進めるにあたり、スタッフの「一人一人 の方にスポットを当てる」という意識により、症状を捉えることができました。「認知症」が、「気付かれず」「追いこまれていく」という状態が、施設サービ ス の現場でも、在宅での介護においても、あり得ると実感しています。近辺地域の認知症の方は、極少数という数値が出ていますが、実際のところはどうなので
しょう。認知症の介護教室を利用された家族が、「もっと早く聞いていれば、苦しまなくて済んだ」と言われるのを聞くと、今、「認知症についての知識と、早 期に気付く」こと の大切さを、多くの方に伝えることが、当面の課題だと思います。それは、一方的でなく、スタッフの持つ専門性と家族介護の知恵を情報交換する場を作りなが ら、在宅介護支援を念頭においた地域のネットワークの拠点になっていきたいと考えています。